決算賞与の支給要件とは?特徴や支給するメリットデメリットも解説 

 決算で予想外の利益が上がった際、節税対策として「決算賞与の支給」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。 

決算賞与は会社利益を従業員に還元するために支給する賞与であり、ボーナス(通常賞与)とは違った特徴のあるものです。 

今回は、決算賞与の特徴や支給要件、賞与を支給するメリットデメリットを解説します。 

決算賞与とは 

決算賞与は通常賞与とは異なります。該当する事業年度の業績に合わせて支給する賞与で、会社の利益を従業員に還元する目的で支給される賞与です。利益の還元ですから、利益が少なければ支給されないこともあります。 

要件を満たせば支給前でも損金算入が可能なため、予想外に利益が上がり、決算前に節税対策として使われることも多くあります。 

決算賞与の支給要件(未払いでも損金に計上できる要件) 

では、賞与を支給する前でも損金として認められる要件について解説します。要件は3つです。 

  •  支給額を各人別かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること 
  •  通知した金額を通知したすべての使用人に対し、通知をした事業年度終了日の翌日から1か月以内に支払っていること 
  •  支給した額を通知した日の属する事業年度において損金経理をしていること 

参照:国税庁タックスアンサーNo.5350「使用人賞与の損金算入時期」 

3つの要件をすべて満たす必要があります。したがって、通知した金額と支払った金額が異なる人がいた場合には、要件を満たさなくなってしまいます。 

また、「支給日に在籍している使用人のみに賞与を支給する」といった就業規則がある場合、決算日時点では決算賞与額が確定していないため(支給日までに退職した方には支払われないため)、要件を満たさないとされます。 

なお、決算賞与にかかる社会保険料は翌年の損金として参入することに留意してください。 

決算賞与の特徴 

決算賞与についての名称にはっきりとした規定はなく、会社によって「臨時賞与」や「特別賞与」など呼び方はさまざまです。

特徴としては、 

・事業年度の業績に応じて支給額が変わる 

・利益が少ないときには支給されないこともある 

・決算時期に支給の有無が決定する 

などがあります。 名称は違っていても、以上のような特徴があれば「決算賞与」といえるでしょう。 

決算賞与のメリットとデメリット 

次に決算賞与を支給するメリットとデメリットについてお伝えします。 

メリットについて 

まず、従業員のモチベーションアップが考えられるでしょう。決算賞与は、従業員の働きに対して企業利益の一部を還元するというような性質を持ちます。いわばご褒美のような賞与です。自身の会社への貢献が認められたと感じれば、来期以降従業員のモチベーションが上がり、ひいては会社の売上向上につながる可能性も十分にあります。会社の未来を長期的に考えれば、有効な手段であるといえるのではないでしょうか。 

また、決算賞与は先にお伝えした要件を満たせば未払いの状態でも損金に算入できます。要は、節税効果があるということです。 

例えば、1,000万円の利益があったとしましょう。税率が25%だと仮定して税金を計算すると、 

1,000万円×25%=250万円 

となり250万円の税金を支払うことになります。 

ここで、決算賞与を支給した場合について考えてみます。決算賞与の金額は300万円だったとしましょう。すると税金額は、 

(1,000万円-300万円)×25%=175万円 

となります。決算賞与を支給しなかった場合と比較して、75万円の節税となるのです。 

デメリットについて 

しかしながら、決算賞与の支給にはデメリットもあります。従業員に賞与を支払うわけですから、手元に残るお金は当然減ってしまいます。節税にはつながっても、キャッシュアウトは増えてしまうのです。 

決算賞与を支給するときは、資金不足にならないよう金額をしっかり検討したうえで行うようにすることをおすすめします。 

さらに、支給の仕方次第では従業員のモチベーションを下げてしまう可能性もあります。「前期はもらえたのに今期はもらえない」となれば、仕事への意欲に影響を与えかねません。決算賞与を支給する際にはこのあたりも考えていく必要があります。 

決算賞与の通知と支給 

決算賞与を支給する際には、従業員に対して通知が必要になります。その際の通知については、口頭ではなく書面で行うようにしましょう。 

また、支払いの際は銀行振り込みで履歴を残しておくのがベストです。もし現金払いにしたい場合は、領収書をもらっておくなど支払った事実を証明できるようにしてください。 

まとめ 

節税対策として有効な決算賞与には、メリットデメリットがあります。決算賞与を支給するのかどうかについて、メリットデメリット両面から検討するのが大切です。また、支給することを決めた際には、要件を守り支払った事実を残しておくことが重要になります。 「支給日に在籍している使用人のみに賞与を支給する」といった就業規則がある場合、要件を満たさなくなってしまいますので就業規則は必ず確認してください。

決算賞与についてわからないことがあれば、【決算直前・無申告おまかせサポート】に、いつでもお問い合わせください。