確定申告で損失繰越できる?方法について解説

確定申告をすると事業の赤字(損失)が繰越できるという内容を聴いた方も多いでしょう。事業で損失が出た場合に、損失を繰越できる制度があります。

今回は確定申告で損失を繰越できる方法について解説します。

損失繰越とは

損失繰越とは、損失を繰越できる制度で「損失の繰越控除」と呼ばれます。青色申告者のみの特典で、青色申告特別控除や青色事業専従者控除など複数ある特典のなかのひとつです。

事業所得に赤字(損失)の金額があり、損益通算をしてもなお引ききれない部分の金額を純損失の金額といいますが、純損失が生じた際には、損失額を翌年以降3年間繰り越せて、各年分の所得金額から差し引くことができます。要は、赤字の年に損失を申告しておくと、黒字になった年の利益から損失分が差引けるということです。

損失の繰越をするためには、損失のあった年に青色申告書を提出し、その後も継続して確定申告書を提出することが要件となります。

損失を繰越した場合の計算例

では、損失を繰越すとどのような計算になるのでしょうか。損失を繰越していた場合としていなかった場合でどのくらい税金に差が出るのか解説します。

【具体例】事業所得の赤字(損失)繰越が80万円 本年分の所得が400万円

(各種所得控除はないものと仮定する)

400万円-80万円=320万円

課税所得320万円の場合、税率は10%

320万円×10%-97,500円=222,500円

よって所得税額は222,500円となります。

もし損失を繰越していなければ

400万円が課税所得になり、税率は20%

400万円×20%-427,500=372,500円

所得税額は372,500円です。

所得税の差額は

372,500-222,500=150,000

となります。

よって税額に15万円の差が出てくることになるのです。利用できる特典は利用し、賢く節税することが大切です。

なお、前年も青色申告をしている方は、純損失の繰り戻し還付を受けることもできます。詳細はこちらをご確認ください。

参照:国税庁「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」

損失申告の方法

損失申告の作成にあたっては、次のような書類が必要になります。

  • 確定申告書第一表
  • 確定申告書第二表
  • 青色申告決算書
  • 申告書第四表(一)(二)
  • その他必要に応じて添付書類

申告書第四表はこのような様式の申告書です。

出典:国税庁「申告書第四表(損失申告用)【令和元年分以降用】」

第四表には氏名や住所のほか、損失額や翌年以降繰越す金額などを記載します。

参照:国税庁「所得税及び復興特別所得税の手引き(損失申告用)」

申告をするのを失念していた場合

損失が生じた年に確定申告書の提出を失念していた場合でも、期限後申告をすることで損失の繰越をすることができます。

提出書類は期限内に申告書を提出するときと同様です。

なお、青色申告特別控除の65万円は期限後には適用できません。期限内申告が条件になるためです。

おって、期限内に申告はしていたものの第四表の提出を失念していた場合は、一度納税地を管轄する税務署に相談することをおすすめします。管轄の税務署はこちらから調べられます。

参照:国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」

まとめ

確定申告で損失を繰越す方法やその際の提出書類について解説しました。

赤字の場合、確定申告を提出する義務はありません。申告が面倒になってしまう方もいるでしょう。しかしながら、申告しなければ損失を繰越すことはできないのです。損失申告は節税対策のひとつですので、翌年以降に向けてしっかり申告をしておきましょう。

「繰越する損失の金額がわからない」「申告書第四表の書き方を知りたい」など損失の申告について困ったことがありましたら、【決算直前・無申告おまかせサポート】に、いつでもお問い合わせください。