役員への決算賞与は損金にならない?役員への賞与について解説 

会社が決算期に臨時的に支給する決算賞与。従業員のモチベーション向上や節税の対策にもなるため、利益が多く出た際には決算賞与を支給する会社も多いでしょう。 

しかし、役員に賞与を支給する会社は多くないかもしれません。なぜなら、原則として役員に対する賞与は損金に算入されないためです。 

では、「役員に対して決算賞与などの賞与は支給できないのか」といえば、そうではありません。今回は、役員に対する賞与について解説します。 

役員賞与とは 

役員賞与とは、会社の業績や役員個人の功績に応じて臨時的に支給される賞与で、通常の役員報酬とは別になります。役員賞与の支給があれば、役員自身はパフォーマンスを評価されたと感じるでしょう。また、役員にさらなる経営努力を促す効果もあります。 

しかしながら、役員に賞与を支給する際には注意しなければならない点があります。 

原則役員への決算賞与は損金にならない 

決算賞与は、会社の利益が多かったときに従業員に利益を還元する目的で支給するものです。「利益が多く出たから支給する」のような臨時的な決算賞与は損金に算入できない決まりになっています。決算賞与だけではなく、役員に対する賞与は原則として損金にできません。 

もし役員賞与を損金算入できてしまえば、役員の賞与を増減させることで利益調整できてしまいます。ゆえに、法人税法で厳格にルールが決められているのです。 

役員賞与が損金として認められるための条件 

では、役員賞与を支給した際に、役員賞与が損金として認められるためのルールをお伝えしていきます。 

役員に賞与を支給し、賞与を損金算入するための方法は4つです。 

定期同額給与 

定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間で支給される給与のことをいいます。金額は毎回同額である必要があります。この方法を使えば、役員への賞与支給が可能です。 

例示しながら説明します。 

例:役員Aに賞与120万円を支給したい場合(月報酬は100万円とする) 

120万円÷12月=10万円 

100万円+10万円=110万円 

役員Aには110万円/月を支給する 

例のように、決まった金額を月報酬に上乗せする形で支給します。会社の利益を予想していなければなりませんが、定期同額給与なら損金算入できます。 

業績連動給与 

利益に関する指標を基礎として算定される給与のことをいいます。要件を満たせば損金算入できますが、業績連動給与として損金算入するためには複数の要件を満たす必要があり、適用するのが難しいといわれています。 

役員を使用人兼務役員にする 

使用人兼務役員とは、役員のうち部長や課長、その他役職を有し、かつ、常時使用人として職務に就いている者のことをいいます。代表取締役や副社長などの役員は、使用人兼務役員になれません。 

使用人兼務役員であれば、賞与を支給し損金算入することが可能です。賞与を支給する際は、他の使用人と同じ時期に支給するようにしてください。 

事前確定届出給与 

年度当初に各役員に対する賞与支給の金額と時期を株主総会で決議し、決議内容を税務署に届け出ます。その後、届け出た内容のとおりに賞与支給を実施する方法です。 

事前に届出していれば、役員に対しても賞与の支給が可能なため、よく使用される方法です。年度当初に賞与の支給時期と金額を決め、管轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出することになります。 

時期に関しては、①または②のいずれか早い日(新設法人については設立日以後2か月を経過する日)までに提出します。 

  1. 株主総会等の決議により給与を定めた場合で、その決議をした日から1か月を経過する日 
  2. 会計期間開始の日から4か月を経過する日 

事前確定届出給与に関する届出書の付表には、支給時期や金額を記載します。提出する際には、賞与の支払い時期は年1回で、決算月のいずれかの日を支給日とすることで決算賞与のように賞与を役員に支給できます。 

ここで注意しなければならないのは、利益が出なかった場合の賞与支給についてです。思ったよりも利益が出なかった場合には、1円も支給しない形にしなければなりません。なぜなら、定めていた金額の一部を賞与として支給しても、損金に算入できないためです。仮に200万円で設定していたものを100万円で支給しても、損金にならないのです。 

また、不支給の際には支給予定日までに取締役会を開催し、全額支給しないことおよび役員が受給を辞退した旨を決議する必要があります。 

役員賞与の決め方 

役員賞与の額に決まりはありません。しかしながら、役員賞与を決める際には、適正な額を定めるのが重要です。社会通念上妥当でない金額だった場合、損金算入できないケースもあります。 

社会通念上妥当かどうかは、「実質基準」と「形式基準」の両方から総合勘案されます。 

  1. 実質基準 役員の職務内容や法人の利益、給与の支給状況などを同程度の法人と比較して妥当な役員賞与であるかどうかを判断 
  2. 形式基準 定款の規定や株主総会の決議で決めた「報酬限度額」を基準に判断 

①②の観点から総合的にみて判断されます。ただし、明確な判断基準は設定されていないため、個々に検討することになります。 

まとめ 

役員に対する賞与について解説しました。役員賞与を支給したものの損金にならないと、その分法人税がかかってきます。また、支給された賞与には所得税も課せられ、ダブルの負担となってしまうので注意が必要です。 

役員賞与の金額について少しでも不安がある方は、【決算直前・無申告おまかせサポート】に、いつでもお問い合わせください。