取引のグローバル化にともない、海外との取引がある企業が増えています。取引金額や決済金額が外国通貨で表示されるケースも多いでしょう。このような外国通貨で支払いがおこなわれる資産の販売や購入などを「外貨建取引」といいます。
外貨建取引の場合は、取引金額や決済金額を日本円に換算する必要があります。なぜなら日本の会計ルールで、財務諸表は日本円で表記することと決められているためです。ゆえに、決算時に「いつのレートを使うのか」「どの種類のレートを用いて換算するのか」が問題となります。そこで今回は、外貨建取引に使用する為替レートについて解説します。
決算時の為替レートはいつのもの?
決算時の為替レートはいつのレートを適用するのかについて、まず外貨建取引があった場合の期末換算方法について説明します。
「期末時換算法」と「発生時換算法」
外貨建の資産・負債については、決算時の換算方法が2種類あります。「期末時換算法」と「発生時換算法」です。
「期末時換算法」とは外貨建資産や負債の金額を期末の為替レートで換算する方法です。一方、「発生時換算法」とは取引発生時の為替レートを適用したままにする方法をいいます。
よって、事業年度内に外貨建取引をおこない決算日に外貨建資産・負債を持っている場合、評価替えが必要になるケースとならないケースがあるということです。
期末換算方法は選択ができるものもある
では、「期末時換算法」と「発生時換算法」のどちらを使えばいいのでしょうか。外貨建資産・負債については、その資産・負債の種類によって法定換算方法が定められています。例えば短期の外貨建債権債務の法定換算方法は「期末時換算法」です。よって、短期の債権債務に関しては期末の為替レートで計算し直す必要があります。
しかしながら、短期の外貨建債権債務や短期外貨預金などは、「発生時換算法」を選択することが認められています(資産や負債の種類によって、選択できないものもあります)。よって、「発生時換算法」を使用し、期末の換算替えをしないこともできるわけです。なお、「発生時換算法」を選択するためには、税務署への届け出が必要です。
取引発生時の為替レートは?
取引発生時には、原則取引発生日の為替レートで日本円に換算することが必要です。取引日が日曜祝日でレートがない場合は、前営業日の為替レートを使用します。例えば、取引した日が土曜日だった場合は、前日金曜日の為替レートを使用します。取引日が月曜の祝日だった場合には、前週金曜日の為替レートを適用します。
しかしながら、日々のレートを確認するのは大変なので、別の簡易的な方法が認められています。
- 前月もしくは前週末日のレート
- 前月または前週の平均レート
いずれも継続適用が条件です。よって、「先月は前月末日のレートを使用して、今月は前週の平均レートを使う」といったことはできません。自社で円換算する際のルールを決めて使用することになります。
原則使用する為替レートはTTM
次に、どの種類の為替レートを使用するかです。為替レートには、TTM、TTSそしてTTBの3種類があります。この中で外貨建取引の金額を円換算する際に使用するのは、原則的にはTTMです。
TTMは「電信仲値相場」とも呼ばれ、海外の外国為替相場を参考に、各金融機関がそれぞれ任意に設定しています。金融機関ごとにレートは違ってくるため、主要取引銀行の為替レートを使用するのが一般的です。
TTSとTTBはそれぞれ「電信売相場」や「電信買相場」とも呼ばれます。TTSは金融機関が顧客に外貨を売る際に使用するレートです。一方TTBは、金融機関が顧客から外貨を買う際に使用するレートとされます。外貨建取引の際に、継続適用を条件としてTTSやTTBの使用が可能なケースもありますが、あくまで原則的にはTTMを使用します。
具体的な決算時の処理
ここからは具体例を用いて、取引発生時と決算時の処理を確認していきましょう。 買掛金を例に説明します。
なお、買掛金は「短期外貨建債権債務」に該当するものとし、期末に換算替えすることが必要であるとします。
【具体例】
10月決算の会社が9/1に100ドルで商品を買い、買掛金が決算時に残っているケースを想定(期末換算方法の選定は行っていないものとする)
取引発生時の処理
(1ドル150円とする)
100ドル×150円=15,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 15,000円 | 買掛金 15,000円 |
決算時の処理
(1ドル160円とする)
100ドル×(160円-150円)=1,000円
借方 | 貸方 |
---|---|
為替差損 1,000円 | 買掛金 1,000円 |
このように、為替レートが変動したことで出た損益は為替差損益として処理していきます。外貨預金を保有している場合の処理も同様です。
まとめ
今回は、外貨建取引があった際に、決算で使用する為替レートや決算時の処理について解説しました。外貨建取引があった場合には、外貨を日本円に計算し直す必要があります。適用する為替レートについて理解しておくことは大切です。
しかしながら、外貨を使った取引の処理は少々煩雑で複雑です。外貨建取引の為替レートや決算時の処理についてわからないことがあれば、【決算直前・無申告おまかせサポート】に、いつでもお問い合わせください。